車いすは身体的寸法に合わせた適合が大切であることは、第二回で紹介しました。ただ標準型車いすというのは、利用者その方のためには設計されていません。したがって、車いす利用者にとっての効果(上記の5項目等)を引き出すためには、症状による適合がさらに求められます。
前ズレとは、見た目には文字通り座る姿勢が前にずれてしまう現象ですが、実はみなさんも日常生活で体験しています。椅子や座いすなどに座り、背もたれに寄りかかると、おしりが前方向(脚側)にずれていくことを感じたことがあると思います。姿勢が崩れていくだけではなく、おしりのお肉や皮膚が突っ張る感覚を覚えるでしょう。それが身体にかかるせん断方向の力です。それを「ズレりょく」と言います。
前述した症状が見られる利用者が車いすに座った時には、車いすの座面と背もたれの生地に接触しているおしりと背中には常にこのような力がかかっています。さらに、おしりの坐骨や尾骨・背中の突出部には集中して圧力+ズレる力がかかりやすいのです。
毎日もしくは週に何日か利用する車いすは、移動手段であり生活する手段でもあり、さらに利用者・介助者の身体的心情的補助となり、ゆとりを生み出します。利用者の症状を考慮し車いすの利用目標を設定し、その実現のために必要な種類と付属品、そしてその選定理由を明確にすることは、利用者の生活の質の向上につながります。
「今、出来ること、しなければならない事」を利用者の症状をしっかりと見て、実践していきましょう。
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