車椅子介助の正しい方法とは?施設で、自宅で、介護を始める人へ
初めての車椅子生活では、介助する側も初心者であれば、わからないことが多いでしょう。バリアフリーや動線確保といった生活上の工夫もさることながら、長く車椅子に座る生活に突入するわけですから、「座り」へのケアが重要になります。車椅子介助の注意点とサポート法を解説します。
移乗のときはベッドや椅子に車椅子を近づけ、最短距離の移動を
ベッドや椅子から車椅子に利用者を乗せるときは、車椅子をベッドや椅子に引き寄せ、最短距離で移乗できるようにしましょう。車椅子が遠くにあり、歩いて移動しなければならないと、利用者にも、介助者にも負担がかかります。
車椅子に深く腰かけているかをチェック
利用者を車椅子に移乗したら、まずは椅子に深く腰かけているかをチェックしましょう。浅く腰かけていると、身体が安定せず転倒などの原因になります。なお、浅く座ったうえで背もたれに強くもたれかかると、ずっこけ座りになります。ずっこけ座りを続けるとお尻の後ろにある仙骨に強い負担がかかり、骨が皮膚を常に圧迫することで床ずれの原因になりかねません。
正しい姿勢で座らないとうまく飲み込むことができず、唾液や食べ物などが気管に入ってしまう誤嚥を引き起こすこともあります。座面には深く座り、背もたれへ自然に背中が沿うようにしましょう。座面が長すぎるなら、背側にクッションを入れて調節するのがおすすめです。また、猫背になってお尻の後ろにすき間ができてしまう場合は腰当て用クッションを活用し、安定して座れるよう工夫しましょう。
必ずフットレストに足を乗せる
足裏が地面についていないと、車椅子の車輪に足を巻き込む危険があります。また、車椅子のまま食事をすることになったときには、ふんばることができずうまく咀嚼できないなどの問題も起こります。移乗したら、また移動中も、必ずフットレストに足が乗っているかをチェックしましょう。
「動きます」「止まります」「曲がります」常に声がけを
車椅子を押すときは、沈黙のままではいけません。いつ動き出すか、どこへ向かうのかがわからないと、車椅子に乗っている人の心身に負担がかかります。「それでは前へ進みます」「段差を一段ずつ上ります」など、必ず声がけを行いながら介助しましょう。とくに段差を降りるときは後ろ向きになるため、利用者の不安が高まります。ゆっくりとした動作と声がけが大事です。
頻繁に姿勢が崩れるようなら車椅子のサイズ変更とクッションの検討を
車椅子に深く腰かけてもらっても、いつのまにか前にずれている、体がすぐどちらかに傾くといったことが起こる場合は、サイズが合っていない、またはクッションが適していない可能性があります。姿勢の崩れは、サイズの不一致や素材の固さ、柔らかさによる不快から逃れたいサインでもあるためです。
標準型車椅子の適正身長は、多くが165センチから175センチです。日本の高齢者に多い身長は、145センチから160センチですから、使用している車椅子では大きすぎる可能性があります。体格に合った車椅子を検討し直しましょう。
また、クッションの素材を検討することも大事です。床ずれ予防のため、圧力分散性に優れ、高い流動性を持ち合わせている素材を選ぶのが基本になります。ウレタン、ジェル、エアなど、車いす用クッションにはさまざまな種類がありますから、利用者の状態に合わせ、最適なクッションを選びましょう。そのためには、お店での試用がおすすめです。
クッションで車椅子生活をもっと快適に
車椅子用のクッションにはさまざまな種類があります。座位を保つことができる人にはフラットなタイプがおすすめですし、自分で座位を保てない人には、姿勢を安定させるために坐骨部を包み込んでくれるものが助けになるでしょう。また、クッションの厚みも大切です。床ずれのリスクが低い方の場合は薄いクッションでも十分ですが、床ずれのリスクが高い方の場合は圧力分散性の高い厚めのクッションがおすすめです。
上半身の崩れが気になる、座面が長いなどの悩みには、専用のバッククッションを利用すれば効果的です。
利用者の快適な車椅子生活のため、正しい方法で介助しよう
車椅子の移乗や移動に関しては、利用者の様子を見ながらゆっくり行い、常にコミュニケーションをとりましょう。また、車椅子を心地よく利用してもらうために利用者を観察し、最適なクッションを見つけて姿勢をサポートしましょう。
正しく車椅子に座れない生活が続くと、床ずれの発症につながります。車椅子を適切に選定し、良い座位を保つことができれば、生活の質(Quality of Life = QOL)の向上につながります。逆にそこをおろそかにしてしまうと、長期治療が必要な床ずれの発症につながるリスクもあります。「座り」へのケアは、それほどまでに大事なのです。
よくある質問
車椅子介助の正しい方法とは?
・移乗のときはベッドや椅子に車椅子を近づけ、最短距離の移動を。
・車椅子に深く腰かけているかをチェック。浅く腰かけていると、身体が安定せず転倒などの原因になります。
・必ずフットレストに足を乗せる。足裏が地面についていないと、車椅子の車輪に足を巻き込む危険があります。
・「動きます」「止まります」「曲がります」常に声がけを。
車椅子での正しい食事姿勢
・車いすに座った状態で、背筋を伸ばし、正しい姿勢を保ちましょう。
・事を摂る際には、テーブルの高さを調整して、車いすに合わせた高さに設定しましょう。
・テーブルの中央よりも前方に食事を配置すると、腕や手を自然な位置に置いて食べやすくなります。
正しい姿勢で座らないとうまく飲み込むことができず、唾液や食べ物などが気管に入ってしまう誤嚥を引き起こすこともありますので注意しましょう
車椅子で姿勢が崩れる原因は?
車椅子に深く腰かけてもらっても、いつのまにか前にずれている、体がすぐどちらかに傾くといったことが起こる場合は、サイズが合っていない、またはクッションが適していない可能性があります。姿勢の崩れは、サイズの不一致や素材の固さ、柔らかさによる不快から逃れたいサインでもあります。標準型車椅子の適正身長は、多くが165センチから175センチのため、使用している車椅子では大きすぎる可能性があります。
参考:『介護職員初任者研修課程テキスト3』日本医療企画、p219
『寝かせきりにしない!「坐り」ケアの実践』ヒポ・サイエンス出版 p23